……っぽい。
思わず素っ頓狂な声を上げ、椅子からも立ち上がってしまったが、それこそが人間のまともな反応なのではないだろうか。
歓迎会で腹踊り……そんなアホなことがちゃんとプログラムとやらに入っているにしても、普通は先輩社員の役目なんじゃねーの? しかもそれ、伝統芸能でもなんでもなくない!?
「あれ、笠松君、腹踊り嫌い?」
やっべ、超変な会社に就職しちまったよ!と内心焦りまくっている俺をよそに、先輩は斜め45度からの意味不明な質問をしてくる。
しかし顔は……顔だけは可愛いから、俺が立ち上がったことでさらに上目遣いになった男心をくすぐる可愛い顔になかなか強く出られない。
「いや、そういう問題ではなくてですね、どうして腹踊りをする必要があるのかを、まず聞きたいです。まったく意味が分かりません」
「え、だって、ウチの会社の伝統だもん」
「伝統……。じゃあ、なぜ俺が抜擢を?」
伝統ならば、まあ仕方がない。
この、いかにも変わった先輩が、腹踊りを見たいがためにプログラムにねじ込んだのかもしれないという疑いは、ちゃんと晴れてくれた。
先輩の上目遣いに惑わされつつも、なんとか尋ねると、彼女はさも当たり前だというように、サラリとこう答える。