……っぽい。
 
先輩は、俺が仕事を放り投げて水族館に駆けつけたとき、クラゲ展示の前でプワプワ泳ぐそれを覇気の欠片もなく眺めていて。

その横顔が今にも死にそうだったから、直感的に恋愛関係のことだと察しがついた。

隣のデスクの大崎ちゃんに彼氏とのことを尋ねられたとき、結婚までもうちょっとかなと言って幸せそうに笑っていたから、大きなケンカでもしたのだろうかと思ったのだが、それで俺を呼び出すか……? とも不思議に思う。

案の定、先輩に頼みを聞いてみると、鍵を開けて部屋の中の様子を見てほしい、ときた。


それからの事の顛末は、先輩と2人で見て、感じて、思ってきたことに準ずる。

彼氏の浮気。

ホテル代わりに使われた部屋。

部屋の中の物に感じたちょっとした違和感は、全て彼氏が連れ込んだ浮気相手によるもの。


それならまだ、よかったかもしれない。

先輩はすぐに人を信じるし、疑うことを知らない人だから、ずっと気づいていないようだったが、彼氏だと思い込んできた男は、先輩を遊び相手にしか思っていない最低男だった。

彼氏に連絡を取ってみると言ったくだりで先輩の言葉と様子に違和感を感じ、先輩と待ち合わせのカフェに入り、もしものときのために近くの席で様子を窺っていたときに確信したのだ。

--コイツ、先輩のことなんとも思ってない。
 
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