……っぽい。
 
こんなに可愛いのに。

変人で珍獣だけど、可愛いのに。


そこでふと俺にひとつの仮説が浮かび、彼が店を出ていったあと、先輩が呟いた「緊張した」という台詞によって仮説が確信に変わった。

先輩はきっと、あの人の前では変人と珍獣なのを隠してつき合ってきたのだな、と。

失礼だが、そういった器用なことができるタイプには見えないし、緊張したって言っている時点で自分で気づけよバカとも思った。


でも、気づかない……気づけないのが先輩だ。

そこまであの男に惚れていたのかと思ったら無性に腹が立ったが、これできっぱりと縁が切れたことに、まずは安堵した俺だった。


それを問い詰めれば、案の定そうだった。

先輩も先輩だが、相手も相手だ。

焼き肉奢ってもらってる場合じゃねーし。

妙にイライラが募って、つい、根も葉もないことまで疑って、そうしたら先輩が言うのだ。


「真人はそこまで最低じゃないよ!」


じゃあ、どこまでのラインだったら最低じゃない? なんで先輩があいつを庇う?

なんでそこまでお人好しでいられるんだ。

……なんで俺を“男”として見ない?


「そうやって無条件に他人を信じるから、自分の部屋をホテル代わりに使われるんですよ!」
 
< 79 / 349 >

この作品をシェア

pagetop