……っぽい。
こんなに可愛いのに。
変人で珍獣だけど、可愛いのに。
そこでふと俺にひとつの仮説が浮かび、彼が店を出ていったあと、先輩が呟いた「緊張した」という台詞によって仮説が確信に変わった。
先輩はきっと、あの人の前では変人と珍獣なのを隠してつき合ってきたのだな、と。
失礼だが、そういった器用なことができるタイプには見えないし、緊張したって言っている時点で自分で気づけよバカとも思った。
でも、気づかない……気づけないのが先輩だ。
そこまであの男に惚れていたのかと思ったら無性に腹が立ったが、これできっぱりと縁が切れたことに、まずは安堵した俺だった。
それを問い詰めれば、案の定そうだった。
先輩も先輩だが、相手も相手だ。
焼き肉奢ってもらってる場合じゃねーし。
妙にイライラが募って、つい、根も葉もないことまで疑って、そうしたら先輩が言うのだ。
「真人はそこまで最低じゃないよ!」
じゃあ、どこまでのラインだったら最低じゃない? なんで先輩があいつを庇う?
なんでそこまでお人好しでいられるんだ。
……なんで俺を“男”として見ない?
「そうやって無条件に他人を信じるから、自分の部屋をホテル代わりに使われるんですよ!」