……っぽい。
その後、俺の左頬に鋭い痛みが走ったのは言うまでもなく、目に涙をいっぱい溜めて俺を見下ろす超絶ダサい部屋着を着たスッピンの先輩は、そそくさと寝てしまったのだった。
はー……。
ガキみたい、俺。
でもガキはガキなりに頑張ったつもりだった。
色々と条件を突きつけて先輩を“絶対服従”の檻で囲って、四六時中、見張れるようにしたし、真人真人って言われると普通に妬くから、それもやめさせるためにペナルティーまで設けた。
それでも結局、何一つ気づいていない先輩の生理現象発言で鮮やかすぎるくらい鮮やかに持っていかれてしまうという……。
この破壊力たるや、さすがすぎる。
そういや、千晶にも言われたっけ。
俺が先輩の話ばかりするために千晶の奴がどんどん不機嫌になっていって、でもそれを疲れているせいだと思い込んでいた俺は、笑わせるためにまた先輩の話をして。
そして、とうとう「医者と浮気してきた」と堂々と事後報告されたとき。
ぽかんと口を開けた俺に、千晶は言った。
「ジュンノはさ、自分じゃ気づいてないと思うけど、珍獣先輩の話をしてるときが一番幸せそうなんだよ。何年もつき合ってきて、お互いをよく見てきたと思ってたんだけど、ジュンノ、あたしのこと、もう見てないんだよね」