……っぽい。
 
基本的にラブコメ体質だし、楽天思考だし、恋が一つ終われば、すぐに“次の恋を頑張ろう!”と吹っ切れも早いし、自分ではそんなに深く傷ついてきたつもりはなかった。

でも本当は、分かっていた。

私に“好意”が寄せられていると実感があった恋は、今までに一つもない。


私から好きになって、つき合って、相手からの好意が薄いのでは……と漠然と感じながらも、自分から好きになったのにそういうものを求めすぎてはいけないと無意識にセーブして。

そうして結局、言いたいことも言えずに消化不良のまま恋が終わって、深く傷つく。

それが私の恋の在り方だった。


「先輩、いいことを教えてあげます」


いい歳をして泣きじゃくる私の涙を親指でそっと拭きながら、いつの間にか優しい表情になった笠松が、これもまた優しい声で囁いた。

どんなことを教えてくれるのかと黙っていれば。


「女の子なんてものはですね、男に溺愛されてなんぼなんです。先輩は今度、骨の髄まで愛し尽くされる恋をするといいですよ」

「溺愛……?」

「そう。思いっきりワガママな恋、したらいいんじゃないですか?」


甘い声と台詞で、笠松は言う。
 
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