気になるあの子は高校生 ~奪われた恋心~
恋愛はご法度です。
春は出会いの季節とはよく言ったものだ。
新入社員が入り、可愛い後輩ができると結婚を求める女子たちが色めき立つ。
ま、私は社員ではなく公務員なのだけど。
「ね、どの子がイケてると思います?」
同僚の森沢満里奈(モリサワ マリナ)が小首を傾げてこそっと聞いてくる。
しかし、はっきり言って私はそんなことに興味はない。
いや、興味があってはならないのだ。
「まったく…何を言ってるんですか?そんなこと考えていいわけないでしょう」
眼鏡の奥でにっこりと笑ってみせると、満里奈は「別にいいじゃないですかぁ」と唇をとがらせた。
ふわりと柔らかなパーマがかかった栗色の髪にパッチリとした瞳の彼女はそんな仕草ですら愛らしい。
対照的に私は黒髪を後ろでひとつにまとめた髪。眼鏡をかけ、スーツを身に纏っている。
隣に座っている満里奈は見るからに優しそうな印象だが、私は反対に厳しそうな印象を相手に与えているらしい。
服くらいもう少し柔らかな感じにしてみない?と言われたこともあるが、スーツはいわば私の戦闘服であり、脱ぐわけにはいかないのだ。
印象が変わればモテるといわれようが、そんなことはどうでもいい。
わたしの勤める場所の大半を占める人たちと恋愛はご法度。
満里奈の視線の先にいる集団に対する恋愛感情なんてものはあってはならない。
ましてや結婚なんてあり得ないのだから考えるだけムダなのだ。
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