気になるあの子は高校生 ~奪われた恋心~
全校集会後。
教室に戻った生徒たちの前に立ち、自己紹介をするため黒板に名前を書く。
カツカツとチョークの音を鳴らして書き終えてから軽く手をはたいて生徒たちに向き直り、口を開く。
「はじめまして。私は山城芹香(ヤマシロ セリカ)といいます。これから一年間、このクラスを受け持ちます。では…」
「先生、何歳なんですか~?」
案の定、元気の良さそうな男子が話を遮り聞いてきた。
歳を知ってどうしようというのか。
まあいい。こんな質問はサラッと流すに限る。
「24です。…他に何か質問は?ないならこれからのことについて話をします。今必要でないような質問は後にするように」
淡々と答えて、これからのことについて説明しながら教室を見回す。
空いている席はひとつだけ。
新入生挨拶をサボった一見真面目…に見えた子の席だけが空いている。
彼が来たら一応理由を聞いてみよう。
何かあったのかもしれないし。
たいした理由じゃなかったら放課後呼び出して注意をしてやらなくちゃ。
入学したての生徒たちはまっすぐにこちらを見て話を聞いている。
まだおしゃべりをすることもないけど、しばらくしたら話を聞かなくなる子も出てくるんだろうな。
そうならないためにも最初が肝心。甘い顔をするわけにはいかない。
かえって少し厳しいくらいがちょうどいいだろう。
叱るのは苦手だけど、全校集会に来なかったあの子にはしっかり言わなくちゃ。
よしっ、頑張るんだから!!
教卓の下でこぶしを握りしめて私はを小さく気合いを入れた。