わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜
「はぁ…なんか興醒めたわ。
今日はもう帰ろーぜ」
「ん…ここあもドキドキしたら疲れちゃった。
智哉のせいだよ!」
「そんなこと言われてもね…」
口々に何処か安堵したような声を発し、生徒玄関へ向かう。
バンバンと何かを叩くような音がするのに気付いたのは、二階まで階段を降りたところだった。
…………一階から聞こえる。
「おいおい、今度はなんだよ…
智哉の次は真理でもいるってのか?」
「流石にそれは…真理はさっき帰ったじゃない」
「………………じゃ、じゃあなんの音っ?」
若干冷や汗とみられるものを額につけた広樹の言葉を、私が切り捨てる。
ここあは智哉の後ろにそっと隠れた。
「………俺が見てくる」
覚悟を決めた様子の広樹だけど…意外と広樹って怖がりらしい。
新しい1面が見られただけ、今回の肝試しは良いものだった。
「私も行く」
「………怖くねーのか?」
「幽霊とか信じない派なの」
「あ~…明美らしいな」
広樹が苦笑する。
だって私幽霊なんて見たことないし。
見たことないものを信じて怖がれと言われても、とてもじゃないけど出来そうにない。
つくづく、私って女の子っぽくないなぁ。
そんなことを考えながらすたすたと音がする方へ…生徒玄関へ歩いていくと、近付くにつれて声が聞こえるようになってきた。
「……て、出して…!あけてよ…!」
どこか必死さを覚える、泣き声混じりの声。
…………聞き覚えがある。
「………この声、やっぱ真理じゃねーか」
「どういうこと?なんで真理が…」
広樹と頷きあうと、一気に駆け出す。
何があったのかはわからないが、真理がいるという事実が、足を動かした。