わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜
階段を上るのが辛い。
一段一段、踏みしめると『ピチャン』って音がする。
血が流れ落ちてるのは知ってることだけど、その音がさらに私に痛みを感じさせるから。
…………………ねぇ広樹。
私どうせなら、命を繋ぎ止めるんじゃなくてさ……楽に死ねる力が欲しかったよ。
ホラー映画に出てくる緑色の血塗れゾンビの如く身体を引きずって屋上にたどり着いた私は、最後の力を振り絞って重たいそのドアを開けた。
これを開けなければ私は、絶対に死ねない気がして。
やっと死ねると、安堵した。
手すりも何もない屋上に入ったのは初めて。
だって現実では立ち入り禁止なんだもん。
こんな形で入るとは夢にも思わなかったんだけどなぁ…。
「お疲れさま。やっとついたね。
ゾンビみたいな明美、面白かったよ。
じゃあばいばい。
あとは自分で飛び降りてよね。
私、見てるから」
心底楽しそうに手を振る佐久間。
「―――や゛っど……死ねる゛………」
私は歓喜の声をもらした。
あぁ……今私、笑ってる。
今から飛び降りるのに…変なの。
屋上の縁にやっとたどり着いた私は、迷いもなく空中に足を滑らせた。
ふわっとした浮遊感。
私を死へと誘う感覚。