わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜
―――次の瞬間、私の周りは、まるで最初から何もなかったかのように静まり返っていた。
「………………………え?」
先程までずっと見えていたどす黒い血は、跡形もなく消え去っている。
佐久間も、佐久間の手も、一瞬で消えた。
ただ、暗い空間が続く廊下に震える私がいるだけ。
「………私、生きてる?」
てっきり殺されると思っていたのに。
さっきまでの恐怖が嘘のように消えていく。
「ははっ…生きてるよ」
頬をつねって痛みを感じると、余計にそれが現実だと実感出来た。
疲労からの幻覚。
きっと、そうなんだろう。
今じっくり思い出してみると確かに、広樹は何も見ていないような感じだった。
広樹だって死体を見ても声をあげないような冷たい人間じゃない。
私にだけ…見えてたんだろう、多分。