わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜
ヒトリ、マタヒトリ
異変が起きたのは、私たちが移動を始めてすぐ、3階に降りる階段に差し掛かった時の事だった。
――――――カシャン!
真後ろから聞こえた、何かが落ちる音。
みんなが振り返ったのは、電池切れの懐中電灯を落としたここあが叫んだ後だった。
「きゃああぁあっ!?」
短い悲鳴のあと、その場には静寂が残る。
私達の視線の先には、懐中電灯が1つ。
ここあは、いない。
「っ、ここあっ!?」
智哉の動揺がかなり伝わる声も、ただ虚しく廊下に反響しただけ。
ここあの耳には届くことがなく、消えていった。
今私たちが理解できるとすれば、ここあがいないと言うことだけ。
どうして急にいなくなった?
何を見て、何を感じて叫んだ?
あまりにも急すぎる出来事に、私達はそこまで考えることが出来ずにいた。
何?
一体、何が起きたの?
「血だ」
「え?」
ぼーっとしていた私の思考回路を引き戻したのは、智哉の声だった。
切羽詰まったような、絞り出したような声。
「懐中電灯にも…その周りにも、血が付いてる」
智哉のもつ懐中電灯が照らしている地面には、真っ赤な液体があった。
考えたくないけど…ここあのもので、間違いないと思う。
突然幼馴染みの姿が消える…高校で知り合った私でも動揺するくらいだから、智哉のショックは酷いだろう。