わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜
「こえぇよ」
ぽつり、まるで水が滴り落ちた音みたいだった。
波紋のように、広がって。
「ほんとは、怖くてたまんねぇ。
………俺はさっき明美に何があったかは知らない。
でも、1つ確かなのは明美が怖がってるってことだろ?
なら、俺は怖がってる場合じゃねーんだよ」
私の心に、届いて。
深くまで染み込んでいく。
「俺さ、明美のこと好きなんだ。
だから、俺は何があっても明美を守る。
それが例え幽霊相手だったとしても、俺は明美を守るからな」
ぎゅ、と広樹に抱き締められた。
…………あたたかい。
広樹に触れた部分と…頬が、あたたかい。
ずっと抑えて、何もないふりをしてやり過ごしていた体の震えが、ふっとおさまった気がした。
「ひろ、き………ありがと………」
「あぁ…こんなときになんだけどさ…俺、幸せだよ。
こんな目にあわなかったら、多分想いを伝えることなんてなかったから」
「……ふふっ、なにそれ……」
「だってよー…お前恋愛事とか興味なさそうじゃん…」
「なんでよ…私も女だって」
「おう…知ってる。
なぁ、明美。約束しようぜ」
「……約束?」
「絶対、生きてここから出よう。
そしたら――俺と付き合おう?」
「………………。
…………うん。ありがとう、広樹。
絶対だよ」
それから、指切りなんて子供っぽい約束をした私たちは、手を繋いで教室を出た。
少しでも、お互いの恐怖を和げられるように。
少しでも、体温を感じていられるように。