わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜
―――ふと、前を行く広樹の背中が、突然止まった。
ちょうど音楽室を覗いている形で、この距離からでもどこか険しい顔をしているのがわかる。
「………真理、止まって。
なにか…おかしい」
この角度からじゃ音楽室の中は全く見えないが、広樹がじりじりと後ずさるのを見て動きを停止する。
そして、広樹が素早く方向転換すると、走って引き返してきた。
何かを叫びながら…そう、保健室の時のように。
「明美!真理!来るな!!
逃げろ!今すぐだ!」
「………っ、わかった!」
「えっ?え???」
「いいから、広樹を信じよう。
早く逃げよう!」
「う、うん…」
ほんとは、なんで?とか、何があったの?とか、聞きたいことはたくさんある。
でも、広樹が逃げろと言うのなら…私は信じる。
状況を飲み込めていない真理の手を引いて、素早く階段を降りる。
近くの教室に身を潜めて耳を澄ませると、今私たちがいる3階を通りすぎて2階…1階…と遠ざかる2つの足音が聞こえた。
1つは広樹だとして…もう1つは誰?
まさか…さっきの保健室のヤツがいたとか?