わたしはみんなに殺された〜死者の呪い【前編】〜


ぱっと顔をあげて前を見る。


今なら前だけじゃなくて、周りも見える気がして。


…………どうやら私たちが向かっているのは、職員室らしい。


でも、その前には保健室がある。


………私たちを恐怖へ導いた第一歩だ。


「………あの、佐久間…
そっちは……その……」

「……………なに?」


私が立ち止まって話しかけると、佐久間は長い髪を揺らして此方を向いた。


前髪が目にかかっているその姿が少し不気味で、鳥肌が立つ。


「えっと…
保健室に幽霊とか…いない?」

「……………………」


控えめに問い掛けると、佐久間はぺたぺたと保健室に近付いていった。


ガラリと扉をあけて躊躇いもなく中にはいると、すぐに出てきた。


「いない」

「そう…良かった」


今思ったけど、佐久間って不思議。


さっきから私の前に現れるときはいきなり出てきたり消えたりしてたのに、今は壁を透けるでもなくドアを開けて入った。


裸足で歩いているからぺたぺたと足音がするし、………智哉を殺したときも、触れてた。


他の幽霊と違ってグロテスクでもない。


………返り血はいくらかついてるけど。



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