ウィルス
「何で…」






香苗は由紀の問いに答えず、上体を揺らしていた。







「香苗?」









由紀の胸に暗い不安感が湧いてくる。








「何で…何で!歩けない!」








「香苗!?」







由紀は香苗の置かれた状況が普通じゃないと思い、彼女に駆け寄ろうとした。








その時、香苗と目があった。







「由紀…」









香苗は今にも泣きそうな表情で由紀にすがろうとしていた。











しかし、突如、爆音と共に大きな衝撃が辺りを走った。









その衝撃に由紀は後ろへと倒れてしまう。











「うぅ……か、香苗?」









由紀は何とか起き上がり、香苗の方を見て愕然とした。








「大変だ!機材が落ちてきたぞ!」






「おい、確かあそこに女の子いたよな?」



「マジかよ?やばいだろ、それ。」









辺りの人々が口々に叫び、鉄材が落ちた場所へと向かった。











「香苗ぇぇぇぇっ!」








由紀には絶望的な叫びをあげるしか出来なかった。
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