ウィルス
由紀は階段を降り、リビングで過ごす事にした。






母親は娘が心配らしく、何かと世話を焼いてくれた。







日頃は鬱陶しい行為も今の疲弊し、弱りきった由紀にとっては何よりの癒しだった。










しかし、ゴールデンのバラエティを見ても、話題のドラマを見ても、由紀の心には浸透しなかった。









次はお前だ…









あの由紀の携帯に着信したメールが由紀にいつも語りかけているようで、由紀はどこに行くにも怯えていた。









香苗もきっとこんな気持ちだったのだろう。ただ、あの時の香苗には自分がいた。今の自分には自分しかいない。









恐ろしいメールも舞と香苗の死の真相も知っているのは自分だけなのだ。








今の私に頼れる人なんていない…











由紀の胸を、細い不安という糸がきつく締め付けた。
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