知りたくなかった本当の気持ち
春休みになると、私はなお兄に毎日勉強を教えてもらっていた。
「なお兄~今日はいい?」
「あー、ごめん。
今やってる作業が難しくてさ。
今日もごめん」
だけどここ最近は、教えてもらえない。
ずっとパソコンに向かって、必死に何かをしている。
私は強引にやめさせることはできないから、すぐに立ち去る。
「あ、ごめんね。
仕事頑張ってね」
お父さんの会社を継ごうと、必死に勉強してるなお兄を尊敬できる。
だからこそ私はこういう時は、深入りしないのだ。
ドアノブから静かに離した手は、なんだか寂しかった。
それから私はてくてく部屋に戻っていった。