知りたくなかった本当の気持ち
何もかもから逃げ出したくて、目を瞑って身を小さく縮こませる事しかできない。


迫ってくる彼の足音が怖い。



何を言われるんだろうと考える思考が嫌だ。



座り込んで私との距離までも縮ませる若王子…。



やめて…。 そう叫びたいと思ってしまう。



だけど若王子がやったことは、私を更に怖がらせることではなく、安心させようとする行為だった。



初めて彼は私を抱き締めた。


相手の顔を見ることができないので、どんな意図でこんなことしているのか推測できない。




だけど… 私を宥めようとしているのは確かのようだ。



「珍しい…。

抵抗しないんだな」



そう、私は珍しく若王子から離れようとしていない。



嬉しいからじゃない。


今の私には誰かの温もりが必要なのだ。



例えその相手が若王子だとしても良いんだ。



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