知りたくなかった本当の気持ち
どこか悔いている顔をしていた。


何で? やっぱり私に優しくするのは、今になっても嫌なことなのかな。



しかも私たちの関係は、そこまで深いものでもないし。



私は鞄を肩に掛けて、その場に立ち上がった。



「ありがと。
若王子のこと…少しだけ、好印象になったよ。


若王子は私のこと、きっと今でも変わらずに目障りな存在だと思っているだろうけどさ」



私がそう言うと、本当は帰ろうとした。



だけど若王子の表情が… 今にでも私を引き留めようとしている。



何も言ってこないから、私は気づかない振りをして帰っていった。





「ただいま…」


家に帰ると、いつも通り小さな声で言う。




「お帰りなさいませ。

今晩はリビングでお召し上がりますか?」



家政婦から出迎えてくれた。



偶然玄関付近にいたから、私に話しかけたのだろうけど。



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