知りたくなかった本当の気持ち
「見て見て。
風磨君がいるよ」
いつも帰る時に見る彼の姿を、里桜にも見てもらう。
「そりゃそうでしょうね。
練習はグラウンドでやってるんだから」
とまぁ、冷静に言われた。
若干むくれてしまう。
「そうですか、そうですか。
帰る度に風磨君を見て、少し心情が変化するのは私だけですか。
それでも良いですよーだ」
「フフフ…」
なげやりで言ってると、小さく笑っている里桜。
私は気にせずに歩いていく。
「來奈はさ。
お父さんから交際を強制されてるんでしょ?
学校に好きな人いないの?
知らない人と付き合っても良いの?」
私が先を歩いていると、澄んだ空気に乗って彼女は訊いてきた。
そして今思っていることを言った。
「好きな人…
時々ね、胸が苦しくなることがあるんだ。
恋じゃないって言い聞かせてるんだけどね。
だけど時間が経つに連れて、別に恋って認めても良いかなって思い始めるようになるんだ。
好きな人がいないから、父さんに強く反論できないんだ」