知りたくなかった本当の気持ち

はぁ、と溜め息を吐き門をくぐる。


玄関のドアを開ければ、近づいてくる足音。



本当に今日、帰ってきたんだ。


昨日まではいなかったのに。



「遅かったですね。

さ、見繕うのでメイク室に急いでいらしてくださいよ」



家政婦だった。


文句を1つ言うと、指示を付け加えられた。



靴を脱いで部屋に行こうとすると、もう家政婦はいなかった。



「はぁ」


また溜め息を吐く。


メイク室なんて滅多に使わない。


ほとんど物置になっている。



でもその環境で家政婦は、私たち家族を化けさせる。



家政婦の能力に驚くばかりだ。



「もう相手方はいらしているので、少し急いでやらせていただきます」



と、冷静且つ慌てて作業に取り組んでいる家政婦。



< 297 / 444 >

この作品をシェア

pagetop