知りたくなかった本当の気持ち
はぁ、と溜め息を吐き門をくぐる。
玄関のドアを開ければ、近づいてくる足音。
本当に今日、帰ってきたんだ。
昨日まではいなかったのに。
「遅かったですね。
さ、見繕うのでメイク室に急いでいらしてくださいよ」
家政婦だった。
文句を1つ言うと、指示を付け加えられた。
靴を脱いで部屋に行こうとすると、もう家政婦はいなかった。
「はぁ」
また溜め息を吐く。
メイク室なんて滅多に使わない。
ほとんど物置になっている。
でもその環境で家政婦は、私たち家族を化けさせる。
家政婦の能力に驚くばかりだ。
「もう相手方はいらしているので、少し急いでやらせていただきます」
と、冷静且つ慌てて作業に取り組んでいる家政婦。