知りたくなかった本当の気持ち

「抵抗されると思ったけど、意外と大人しいんだね。


今の顔、かわいいよ」



そう言った彼はようやく私から離れ、床に座った。



そして私はというと。



普段言われない言葉に、顔を赤くしている。



そして今日、初めて大人の余裕というものを実感したのだった。



神崎さんの顔を見ることができない。



「キスは......  奈歩さんで慣れているのか?」



背もたれに寄りかかった彼は、今も尚余裕の表情だ。



しかし私は今の質問で、顔の熱が下がっていく。



「そ、そんなわけ無いじゃ、じゃ無いですか!」



すぐに訂正しなきゃ、と思って口を開くと、噛み噛みだった。



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