知りたくなかった本当の気持ち

諦めてくれたものの、里桜は楽しい顔のままだ。


彼女の右手を離したけれども、不安は募る。


「お」


こちらの存在に気づく若王子。


私は一瞬だけ目を合わせるだけだった。


先に靴を履いた里桜が、若王子に話しかける。


「ねぇ、康くん!

今からあたしと來奈、カラオケに行くんだよー!

いいでしょー!」


ふぅ、自慢気に言うだけか。


と私は安心して靴を履く。


するとこっちを見ている彼は言う。


「へぇ、カラオケか。

いいな。

俺も來奈と行きたいな」


       ......は?

彼の言葉に、乾ききった言葉が出てしまう。


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