君と手を繋ぎたくて
泣きまくって赤い瞳になってしまったあたしが泣き止んだのは、後10分ぐらいで放課後になるって時だった。
「ごめんなさい優志先輩。
こんな時間まで授業をサボらせてしまって」
「気にしないでヒナちゃん。
泣いているヒナちゃん、放っておけないよ」
ふっと小さく笑う先輩は、本当に大好きだ。
「……ヒナちゃん」
「はい?」
保健室に差し込む夕日に照らされた優志先輩は、まるでスポットライトを浴びているようで、とても綺麗だった。
儚くて、綺麗で。
絵になるような光景だった。
「……いつか一緒に、どこか行こうね」
「…………」
「今はまだ、行けないし、彼氏らしい振る舞いは出来ないけど。
…俺、本当にヒナちゃんのこと好きだから」
「……はい」
「必ず、行こうね」
「………はいっ!」
にこっと、さっきのような無理矢理感のない笑顔で、優志先輩は笑った。
いつかまた、この笑顔を見たい。
あたしは心から、そう願った。