君と手を繋ぎたくて

チャラ男と、ヤマグチヒナノ










放課後になってしまい、あたしと先輩は部活に入っていないので、誰もいなくなった教室に鞄を取りに行き、校門まで先輩と並んで歩いた。

さっきのことが嘘のように、先輩は全く話さない。

あたしも黙って、横に並んで歩き続けた。







「…そ、それでは先輩。また明日」

「……ん、じゃあね」





先輩はあたしに背を向け、スタスタ歩きだす。

家が逆方向だから、別れてしまうのはしょうがない。

寂しさは消えないけど、また明日会えるはずだから。

あたしは先輩の後ろ姿を見ながら、ふっと微笑んで、家の方向へと歩きだした。






「あ、すみませーん」





前から来た男の人に、あたしは話しかけられた。

明るい茶髪にピアスのじゃらじゃらつけている、チャラくてあたしが苦手な感じだった。

愛想良くヘラヘラ笑いながら、そのチャラ男はあたしの前に立っている。





「…何の用ですか?」

「少し道聞きたいんだけど、良いかなー?」

「…良いですけど」




道案内、か。

なら人として放っておけないかな。

この辺りのことなら、大体わかるから。







< 101 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop