君と手を繋ぎたくて
チャラ男と、ヤマグチヒナノ
放課後になってしまい、あたしと先輩は部活に入っていないので、誰もいなくなった教室に鞄を取りに行き、校門まで先輩と並んで歩いた。
さっきのことが嘘のように、先輩は全く話さない。
あたしも黙って、横に並んで歩き続けた。
「…そ、それでは先輩。また明日」
「……ん、じゃあね」
先輩はあたしに背を向け、スタスタ歩きだす。
家が逆方向だから、別れてしまうのはしょうがない。
寂しさは消えないけど、また明日会えるはずだから。
あたしは先輩の後ろ姿を見ながら、ふっと微笑んで、家の方向へと歩きだした。
「あ、すみませーん」
前から来た男の人に、あたしは話しかけられた。
明るい茶髪にピアスのじゃらじゃらつけている、チャラくてあたしが苦手な感じだった。
愛想良くヘラヘラ笑いながら、そのチャラ男はあたしの前に立っている。
「…何の用ですか?」
「少し道聞きたいんだけど、良いかなー?」
「…良いですけど」
道案内、か。
なら人として放っておけないかな。
この辺りのことなら、大体わかるから。