君と手を繋ぎたくて








「ヤマグチヒナノが処女?
なわけねーだろ。
お前を襲ったのは、紛れもない俺なんだからな」





あたしを、このチャラ男が襲った!?

きっと漫画なら、あたしの両目が飛び出ていただろう。






「あの、どちら様ですか」

「俺?
ヒナノ、俺のこと忘れたのかよ」

「…どちら様ですか」

「俺だよ俺」

「俺なんて言う知り合いは存じませんが」

「冗談が通じねー女だな。
俺は鬼頭昇(きとう・のぼる)だ。
同じ中学だっただろ?」





確信した。

このチャラ男―――鬼頭昇は、あたしを誰かと勘違いしている。

鬼頭昇なんて言う男、中学にいるはずがない。

中学は、男が教師としてしか入れない女子高だったのだから。





「どなたかとやはり勘違いしていますね。
あたしは確かにヤマグチヒナノです。
だけどあたしは、中学の時は女子高でした」




中学卒業と同時に、今の共学高校への進学を決めたのだから。

男子も男性も禁止の女子だけの学校に、こんないかにも未成年のチャラ男がいるわけがない。

チャラ男とか真面目男だとか、関係ないけど。







< 106 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop