君と手を繋ぎたくて
「ヤマグチヒナノが処女?
なわけねーだろ。
お前を襲ったのは、紛れもない俺なんだからな」
あたしを、このチャラ男が襲った!?
きっと漫画なら、あたしの両目が飛び出ていただろう。
「あの、どちら様ですか」
「俺?
ヒナノ、俺のこと忘れたのかよ」
「…どちら様ですか」
「俺だよ俺」
「俺なんて言う知り合いは存じませんが」
「冗談が通じねー女だな。
俺は鬼頭昇(きとう・のぼる)だ。
同じ中学だっただろ?」
確信した。
このチャラ男―――鬼頭昇は、あたしを誰かと勘違いしている。
鬼頭昇なんて言う男、中学にいるはずがない。
中学は、男が教師としてしか入れない女子高だったのだから。
「どなたかとやはり勘違いしていますね。
あたしは確かにヤマグチヒナノです。
だけどあたしは、中学の時は女子高でした」
中学卒業と同時に、今の共学高校への進学を決めたのだから。
男子も男性も禁止の女子だけの学校に、こんないかにも未成年のチャラ男がいるわけがない。
チャラ男とか真面目男だとか、関係ないけど。