君と手を繋ぎたくて
「は?女子高?
…じゃ、人違いだな……」
首を傾げて頭を掻きながら、あたしの横を通り過ぎようとするチャラ男。
あたしは急いで、その手を掴んだ。
「ぅおっ!?
何するんだよ……」
「ヤマグチヒナノって、誰ですか」
優志先輩の過去に関係する人なの?
なら聞きたくない。
軽々と聞いてはいけない気がするから。
だけど、頭と心は言うことを聞かない。
このチャラ男から聞きだす気満々だ。
聞いてはいけない。
だけど、聞いてしまいたい。
まるでパンドラの箱だ。
開けてしまうと、不幸が訪れてしまう。
だけど、開けたい気もちには勝てないんだ。
今この手を離してしまっては、いけない。
自分と同姓同名の人と、優志先輩との関係を、知りたい。
あたしは、開けてしまうんだ。
パンドラの、箱を。
あたしは、聞いてしまうんだ。
優志先輩の、過去を。