君と手を繋ぎたくて
「山口陽菜乃…か。
俺の知っているヒナノとは、漢字が違うや」
ポケットからスマホを出した鬼頭先輩は、軽く操作した後、あたしに画面を見せてきた。
どうやら鬼頭先輩が見せてくれた画面は、電話帳みたいだ。
や行に、1人だけ登録されてある名前。
山口雛乃。
漢字は違うけど、あたしと同姓同名の、ヤマグチヒナノ。
あたしが画面を見たのを確認した鬼頭先輩は、自分の方へスマホを引き寄せ、再び画面を操作してあたしに見せてくれた。
今度画面に映っているのは、1枚の集合写真だった。
見知らぬ制服姿に身を包んだ、男2人に女2人。
全員満面の笑みで、ピースしている。
男2人と、女1人は、見た瞬間にすぐわかった。
優志先輩・鬼頭先輩・島田先輩だ。
3人とも笑顔で。
…優志先輩のこんな満面の笑顔、初めて見た。
今より少し幼い笑顔の皆さん。
きっと、中学時代の写真だろう。
優志先輩・鬼頭先輩・島田先輩と来れば。
もう1人の見知らぬ女の人は、山口雛乃さんだろう。
まさか関係ない人の写っている写真を、鬼頭先輩が見せるはずがないだろう。