君と手を繋ぎたくて
昇が学校に来ない生活にも慣れてきた頃。
俺は通学途中、いつも一緒に行っている雛乃から小さく折られた手紙を渡された。
同じく一緒に通学している華子はその手紙の内容を知っているようで、ただ何も言わないでニヤニヤ怪しく笑っていた。
学校に着くと、俺らは別れる。
華子と雛乃は同じクラスだけど、俺は別のクラスだから。
だけど全員部活には入っていないから、帰宅も一緒だ。
もう俺たちが、小学生のように関係をからかわれることはない。
たまに聞かれた。
「優志は島田と山口、どっちが好きなんだ」って。
思う人は、少なくないと思う。
女2人に比べ、男は1人しかいないんだ。
誰もがその関係を疑うだろう。
華子と雛乃が、俺をどう思っているかは知らない。
だけど俺は、昔から雛乃が好きだった。
華子のことは正直、友達としては好きだけど、女としては見れなかったから。
…華子にこのこと言ったら怒るだろうけど。
だけど、思いを伝えることはするつもりなかった。
俺は今までの関係で、満足していたから。
例え雛乃の傍に俺がいなくても。
雛乃が別の誰かと幸せになっても。
俺は笑顔で見送れる覚悟があった。