君と手を繋ぎたくて








屋上は、本来立ち入り禁止だ。

だけど昔卒業した先輩が、ピッキングで鍵を開けたんだ。

先生たちは知らない、生徒だけに流れる噂。

半信半疑だったけど、屋上へ続く扉が開き、俺は本当だったんだと知った。








屋上は広く、乗り越えられるぐらいの小さな柵が覆っていた。

俺はその柵にもたれ、雛乃が来るのを待った。







だけど。

数分経っても、数時間経っても。

雛乃は一向に現れなかった。






俺は腕に付けた時計とにらめっこしながら、雛乃を待った。

次第に部活が終わる時間となり、学校にも校庭にも、生徒がいなくなった。





屋上から校舎の廊下が見える。

時々輝くぼんやりとした光は、警備員さんが持つ懐中電灯だろう。

先生と警備員さんたちは、屋上が空いているなどと言う噂は知らないから。

屋上に俺がいることに、誰も気がついていないようだった。




途中、心配になって聖志に連絡した。

7時は過ぎたけど、きっと父さんも母さんも仕事だから。

聖志は家に1人きりのはずだから。








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