君と手を繋ぎたくて
「セイくんに電話?」
突然後ろから声が聞こえて、俺は急いで振り向く。
当たり前だけど電灯なんて何もない真っ暗な屋上に、誰かが立っていた。
真っ暗で顔はわからないけど、声からして雛乃だとわかった。
「あ、あぁそうだよ。
雛乃、来るの遅かったな」
「フフ、ごめんなさい。
ユウがいつまであたしを待ってくれるか、試したかったの」
「試したかったって…。
試さなくても、俺は雛乃のことなら、何時間でも待つって」
「フフフ、本当だね。
ユウ、ずっと待ってくれていたんだね。
あたし、凄く嬉しいよ」
優しい穏やかな口調は、変わっていないけど。
いつもと、違うと思った。
どこが違うのか、上手く言えないけど。
どことなく…雰囲気が違う気がした。
「雛乃、どうしたんだ?」
俺が尋ねると、いきなり雛乃の影が俺に抱きついてきた。
そしてそのまま、唇を塞がれた。