君と手を繋ぎたくて
いきなりだったから、俺は勿論驚いた。
だけど、俺はそこで改めて、雛乃が好きだと気付けた。
「雛乃、俺……」
「ユウ、黙って聞いてて」
「え?」
「あたしね、ユウのことが大好きなの」
俺の横を通り過ぎ、柵を軽々と乗り越え、向こうに立つ雛乃。
あと1歩踏み出したら、下に落下する位置に、雛乃は立っていた。
目が暗闇に慣れてきて、その上今夜は満月で。
月明かりの下、雛乃の後姿を捉えた。
柵の向こう側に立つ雛乃の洋服は、ボロボロだった。
所々破れていて、雛乃の肌が見えていた。
腕や足には、痛々しい痣が覗いていた。
何があったんだ。
俺は聞こうとした。
だけど、雛乃が話し始め、俺の声は遮られてしまった。