君と手を繋ぎたくて








「…ユウが自分を責めることなんて、ないわ」




顔を上げると、雛乃は涙の貯まった瞳を細め、笑っていた。





「あたしが悪いのよ。
だって抵抗しなかったんですもの。
喧嘩すれば勝てないかもしれないけど、抵抗の1つや2つは出来たはずだわ。
それをあたしはしなかったのよ。

ユウが自分を責めることなんて、1つもないわ」





俺は首を横に振った。





「俺、今日屋上でずっと、ボーッと突っ立っていたんだ。
そんなことしている暇があったのなら、雛乃のこと探しに行けば良かったんだ。
それを俺は、しなかった……」

「ユウ。
その気持ちは嬉しいわ。
やっぱりユウは、名前の通り、優しいのね」

「俺、優しくなんて……」

「ユウ。
逆にあたしは、ユウに来てほしくなかったわ。
ユウに怪我してほしくないもの」

「雛乃……」

「来ていたら怒っていたわ」




幼い頃のように無邪気な笑顔で、雛乃は微笑んだ。






…そうだ。

さっきの雛乃は、笑顔じゃなかった。

笑ってはいたけど、笑顔ではなかった。

―――心の奥底では、泣いていたんだ。








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