君と手を繋ぎたくて
第5章
今でも、ずっと
☆陽菜乃side☆
「……良い加減泣き止めって」
あたしは鬼頭昇と喫茶店を出て、見知らぬ建物の屋上へ立っていた。
もう長年誰も使っていないような、古さが目立つ建物。
そんなに高さはなく、4階建てぐらいだ。
あたしはずっと、喫茶店からここまで来るまで、ずっと泣いていた。
そんなあたしを、面倒そうな顔で鬼頭先輩が見る。
「だって…先輩が、可哀想で……ッ」
「可哀想?」
あたしは頷いて顔を上げた。
「ずっとずっと、優志先輩は1人で抱え込んできたんです。
雛乃先輩を、今もずっと、好きでいるんです。
それなのに…あたしってば、告白しちゃって……。
先輩、凄く優しい人だから。
誰よりも、他人の幸せを願うような、そんな人だから。
雛乃先輩と同じ名前を持つ、あたしの告白も、受け入れてくれた。
例えそれが、先輩を、傷つけることになっても……」