君と手を繋ぎたくて









「……ここで、だ」





鬼頭先輩が、ふと呟いた。

独り言に近い、小さな呟きだった。

古く今にも折れそうな柵に手をかけた鬼頭先輩は、重たい口を開いた。






「ここで、雛乃は自殺したんだ……」

「え……?
じゃあ、ここは……」

「俺と、雛乃と、華子と、優志の、出身中学だ」





こんな古びた、誰にも使われていないような場所が?

確かに下から階段を上ってここまで来たことを思い出すと、学校っぽい作りではあったことを思い出す。






「優志が卒業して暫く経った時、外部に雛乃がここで自殺したことが世間に知られたんだ。

外部に漏らしたのは、当時ここの副校長だった奴だった。
金に困っていた所、学校側が名誉と評判を守るために世間に隠した雛乃の事件を、マスコミに売って金を貰っていたんだとよ。

世間に隠していたことがバレた学校は、当時はそこそこ生徒が入学していたけど、次の4月からはパッタリになってな…。
それが数年も続いて、遂には廃校になったらしいぜ」





世間は…雛乃先輩の事件を、知ったんだ。

じゃあ、鬼頭先輩の犯したことも、世間に…?








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