君と手を繋ぎたくて
大好きです、先輩
通された先輩の部屋は、とても綺麗に整頓されていた。
多分物が少ないから、そう見えるのかもしれないけど。
殺風景な部屋が、少し寂しく思えた。
「ココアで良い?」
「あ、はい。ありがとうございます」
目の前にココアのはいったコップを置かれ、一口飲む。
甘いココアの味が、すっと喉にはいっていった。
「そういえばさっきはごめんね」
「何がですか?」
「聖志が追い返すとか失礼なこと言って」
「別に構いませんよ」
「アイツ、俺の弟の聖志。
もうすぐで近くに住む彼女の家に行くみたいだから。
すぐ静かになると思うよ」
扉は閉まっているけど、廊下からは聖志くんのウキウキな歌が聞こえてくる。
歌っている曲は、最近人気急上昇中のバンドの新曲。
音楽に疎いあたしだけど知っている、有名な曲だ。
だから、わかってしまうんだ。
…聖志くんが、かなり音痴なことが。