君と手を繋ぎたくて
バンドのヴォーカルは歌声が高く、合唱曲でソプラノの常連だと言う子でも高くて出ないほど、高い音域だ。
それを少し低めの声の聖志くんが大声で熱唱していて、音程はバラバラだし…。
青いネコが出てくるアニメのあの音痴キャラよりも、もしかしたら下手かもしれない。
「歌うのやめろって言っているんだけどね。
本人は歌うのが好きだから、音痴だと思ってないみたいなんだ。
聖志の彼女は耳が悪いのか、あれを上手いと言うしね」
「そ、そうなんですか…」
お世辞でも、上手いとは言えないのに。
聖志くんの彼女さん、凄いな。
苦笑している先輩につられ、あたしも笑った。
「ところでヒナちゃん、突然どうしたの?」
本題に突然はいられ、思わずココアを他の器官へ流し込んでしまったようで、むせる。
ココアを置いてゲホゲホ言っていると、先輩は心配そうな顔で「大丈夫?」と聞いてくれた。
…やっぱり先輩は、誰よりも優しい人だ。
自分よりも、他人の幸せを願えるような、そんな人。
…だから、素直に言えるんだ。
「先輩。
あたし…やっぱり先輩が好きです」