君と手を繋ぎたくて
「え?
先輩、あたしをフリましたよね?」
「フッてないけど?」
「へっ!?
だって先ほど、先輩好きな人は誰ですかって聞いた時、先輩ヒナノって言いましたよね」
「言ったけど?」
「先輩がヒナノって言うのは、雛乃先輩じゃないんですか?」
「違うよ」
違う?
…待て待て、状況を整理しよう。
先輩はあたしを、ヒナちゃんと呼ぶ。
そして雛乃先輩を、雛乃と呼ぶ。
…どう考えても、雛乃先輩じゃないですか。
「あー、ごめん。
俺が紛らわしい言い方したのがいけないんだ。
俺は、ヒナちゃんが好きだよ」
真っ直ぐ、あたしだけを見つめながら、先輩は笑顔で言う。
その状況を理解するのに、あたしは10秒近くかかってしまった。
その後先輩の家に、あたしの絶叫が響いたのは、言うまでもない。