君と手を繋ぎたくて








「ヒナノも凄いわね。
同じ名前のあの子なら、きっと諦めていたかもしれないわ」






同じ名前のあの子。

雛乃先輩、だ。






「…わたしね、ずっとユウシの笑顔が見たかったの。

いつも教室で話しかけても、ユウシは笑うんだけど、心から笑ってなかったわ。
見せていたのは、哀しさだけが混じる笑顔だった。

きっと、わたしのせいだったのね。
わたしがユウシのこと、責めたのが悪かったのね。

雛乃がいなくなって、その後わたしは転校して。
転校先の学校で、後悔したの。

雛乃が亡くなって、1番哀しんでいるのはユウシのはずなのに。
あの時のわたしは、責めることしか知らなかったの。

雛乃が自殺した理由知っていたから、ユウシのせいじゃないって言えば良かったの。
信じられないかもしれないけど、わたしあの時ユウシを励ましに行こうとしていたのよ?

聖志くんから雛乃が自殺した理由を聞いたの。
それでわたし毎日ユウシの元に行って、ユウシが目覚めたら、ユウシのせいじゃないって言おうって考えていたの。

だけど実際にユウシに浴びせたのは、非難だけだった。
ユウシの家を出て、自分が言ったことの重大さに気が付いたから、謝りに行こうと思っていたのよ。
だけどあんなこと言ったのに今更戻れないから、そのまま言えず仕舞いだったわ。


高校に入ってユウシと再会して、ずっと謝ろうと思ってた。
だけどユウシの雰囲気が中学の時と全然違ったから、謝れなかったの。
普通に話しかけても、あの時のことが嘘のようにわたしにノート貸してくれたりしてくれて。

だからずっと、ユウシの笑顔が見たかった。
同時に、わたしの大事な親友の好きな人には、幸せになってほしかった。


…ヒナノ。
ありがとう。

最初は雛乃と同じ名前だったから、これ以上ユウシが傷つかないか心配だったわ。
だけど、ヒナノは雛乃と全く違うわね」






あたしが、雛乃先輩と違う…?

名前は同じで、顔も似ているというのに?









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