君と手を繋ぎたくて







ハルのことは、嫌いじゃない。

クラスで浮いて、孤立気味だった俺に、話しかけてくれた奴だから。

この学校は1年時のクラスのまま、卒業を迎えるから。

ハルとはすでに1年一緒にいるし、この先卒業するまで一緒にいるんだ。





嫌いじゃない。

だけど、ハルが雛乃と似たような結末を辿ったとしたら、と俺は深く考えてしまって。

明るく毎日欠かさず話しかけてくれるハルにも、上手く接することが出来ずにいた。





…別に良い。

誰とも付き合わなければ、誰かが傷つくこともない。

ハルとは今の曖昧な友達未満の関係を続けて行けば、何もない。

勿論俺は自分から誰かに話しかけることがないから、ハル以外の友人が出来ることもないだろう。

ハルも1年俺と一緒にいるけど、他にも仲の良い友人は沢山いる。

いつしかハルも、離れて行くんだろう。




それでも、良い。

俺は何も後悔しないし、自分の行動を責めたりしない。

1人でいることが、雛乃への謝罪だから。





入学式は終わったものの、1年の学年主任となる先生がマイクを使って話していて。

まだ帰りそうにない。

…早く帰りたい。

この人が沢山いる場所から、離れたい。

俺には、不似合な場所でしかないから。









< 172 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop