君と手を繋ぎたくて
長い学年主任の話が終わったらしく、新1年生が帰宅準備を始めた。
1年の時は俺も、ああやって準備していたっけ。
今は帰っている1年生たちも、来年になれば俺たちと同じことを思うんだろうな。
…ああ、早く帰りたいって。
「陽菜乃ッ!」
「あ、環奈ちゃん」
「もう、呼び捨てで良いって、何回も言ったでしょう?」
「アハハ、ごめんね環奈」
俺の目線の先で、入り口へと向かって行く2人の1年生。
1人は見知らぬ子だが、もう1人は知っていた。
先ほど俺に何回も謝った、雛乃似の子だ。
てか、ヒナノ……?
あの子、顔が似ているだけでなく、名前も同じなのか?
…こんな偶然、アリかよ……。
「あ、優志!」
「……ハル」
思い切り肩を叩かれ、思わず1歩逃げる。
無意識の行動に、思わずハッとしたけど、ハルは気にせず話しだした。
…コイツがこういう性格で、良かった。