君と手を繋ぎたくて
突然のことで状況が読めていないのか、ヒナノと呼ばれた雛乃似の1年生は不思議そうな顔で俺を見た。
「……大丈夫?」
「あ、はい…あの、何があったんですか?」
俺は無言で、彼女から離れた。
彼女は散らばったガラスの破片を見て、目を見開いた。
そして俺の目を、真っ直ぐと見つめた。
何故かその強い光を宿した瞳に、俺はドキッとした。
「大丈夫ですか!?
怪我をしていませんか?」
「大丈夫だよ」
そう笑顔で言ったつもりだけど。
ホール内が暑くてワイシャツの袖をめくっていて、剥き出しになった腕に軽い痛みを感じていた。
でも、ぶつかった時何度も謝ってもらったから。
これ以上彼女に謝らせたくなくて、俺は痛みを感じる腕を、背中へ回して隠すようにした。
「そうですか…。
本当に、ごめんなさい。
そして、ありがとうございました」
「大丈夫だよ、気にしないで」
頑張って笑っては見るけど。
腕の痛みは増していく。
早く離れて、家へ帰らないとな…。