君と手を繋ぎたくて
「……ッ」
彼女が見ていたのは、血の滲んだ俺の腕だった。
死角に隠しているつもりだったけど、ハルと環奈ちゃんの意味の分からないやり取りに気が抜けたんだ。
いつの間にか、隠していたはずの腕が、彼女の視界にはいってしまったんだ。
「先輩、怪我していますッ!」
「…これぐらい大丈夫だよ」
「駄目です!
早く救護室に行きましょう!」
彼女は何の躊躇いもなく、俺の腕を握った。
その瞬間、静電気を受けたような感覚がしたけど。
強くまるで離さないと言うほど強く握った彼女の手を離すことが出来なくて。
俺は彼女に引っ張られる形で、歩きだした。
だけど、脳内に“あの場面”が再生されて。
俺の心臓が、嫌な音を立てて。
―――いつの間にか、強く握っていたはずの手を離していた。
「…せん、ぱい……?」
俺の腕を握ったため、彼女の手は軽いけど赤く染まっていた。