君と手を繋ぎたくて
俺は急いで我に返り、ポケットからハンカチを取り出し、彼女の手を自分から握った。
やっぱり静電気に当たった感覚がしたけど、気にしない。
軽いピリピリした痛みもあるけど、気にしない。
「……よ…」
「え?」
「…何しているんだよッ!」
俺は彼女を真っ直ぐ見つめたまま、そう叫んだ。
賑やかだったホール内が、一気に静かになった。
お見合いの雰囲気を作りだしていた2人も、俺たちに注目した。
「何で俺の腕を握ったわけ?
血がつくに決まってんじゃん」
「そ、そうですけど…」
「もし俺が血に関する病気とか持っていたらどうしていたんだよ。
あんたも伝染していたかもしれないんだぞ?
血は軽々触るなって、言われたことないのかよ」
「あ、ありますけど…」
「じゃあ、軽々と触れないで」
少し血のついたハンカチを彼女の手から離し、俺は作り笑いを見せた。
「俺のことなら大丈夫だから。
心配しないで」
彼女の横を通り過ぎ、俺はホールを出ようとした。
向かうのは救護室じゃない、家だ。
早くこの空間から、出たかった。