君と手を繋ぎたくて
会場から出て、ホールの廊下を早足で歩いていると。
後ろから走る音が聞こえた。
「先輩ッ!」
「……何の用?」
冷たい言い方だったと思う。
だけど俺は早く出たくて仕方なかったから。
片付けとかは残っているけど、面倒だったし。
世の中で言う、サボるつもりだった。
「どこに行くんですか?
救護室はあっちですよ」
追いかけてきた雛乃似の1年生は、首を傾げた。
…てかこの子、それだけ言いに来たの?
「救護室になんて行かない。
俺は家に帰るんだ。
…これ以上、俺の邪魔しないでくれない?」
見ていたくなかった。
雛乃に似ている、ヒナノを。