君と手を繋ぎたくて
すると彼女は俺の前に回り込んだ。
「駄目です。
早く救護室行きましょう」
「家近いから」
「駄目です!
早く手当てしましょう!」
「……あのさぁ」
俺は大げさに溜息をつきながら、俺より10センチぐらい背の低い彼女と目線を合わせた。
「これ以上俺の邪魔しないで。
大体、1年生のアンタには関係ないだろ。
さっきのオトモダチの所戻れ」
「……戻れません」
「何で」
「環奈、あの先輩と一緒にいるから…」
「……チッ」
ハルの野郎…。
アイツがその環奈ちゃんと一緒にいなければ。
この子は俺から離れてくれたって言うのに。
…面倒くせぇ馬鹿だ、アイツも。
「環奈の、ずっと会いたかった先輩みたいなんです、あの人。
環奈ってずっと、中学時代年上の人が好きで。
その人を追いかけて、この学校に入ったって、入学式の最中に言っていました。
それが、あの先輩みたいなんです。
折角の再会、邪魔しちゃいけませんから…」