君と手を繋ぎたくて







「先輩、名前何て言うんですか?」

「…………」

「…先輩?」

「……あぁ、ごめん。何?」

「名前、何て言うんですか?」

「村木優志」





目の前の子が、雛乃と同じ名前で。

動揺していた俺は、彼女の質問を聞いていなかった。






「村木先輩ですか?
よろしくお願いします、村木先輩!」





中学の頃も今も、後輩になんて縁のなかった俺は、先輩と呼ばれるのは初めてだ。

俺は「よろしく」とぎこちない笑みで返した。





「……陽菜乃ちゃん」

「は、はいっ!」




いきなり俺が名前を呼んだからなのか、吃驚していた。

だけど、ピシッと音が付きそうな綺麗な直立姿勢だった。





「包帯、ありがと。
ハルたちの所、行こうか」





足を怪我したわけではないので、立ちあがると。

陽菜乃ちゃんはキョトンと首を傾げた。







< 185 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop