君と手を繋ぎたくて
「先輩、名前何て言うんですか?」
「…………」
「…先輩?」
「……あぁ、ごめん。何?」
「名前、何て言うんですか?」
「村木優志」
目の前の子が、雛乃と同じ名前で。
動揺していた俺は、彼女の質問を聞いていなかった。
「村木先輩ですか?
よろしくお願いします、村木先輩!」
中学の頃も今も、後輩になんて縁のなかった俺は、先輩と呼ばれるのは初めてだ。
俺は「よろしく」とぎこちない笑みで返した。
「……陽菜乃ちゃん」
「は、はいっ!」
いきなり俺が名前を呼んだからなのか、吃驚していた。
だけど、ピシッと音が付きそうな綺麗な直立姿勢だった。
「包帯、ありがと。
ハルたちの所、行こうか」
足を怪我したわけではないので、立ちあがると。
陽菜乃ちゃんはキョトンと首を傾げた。