君と手を繋ぎたくて
「先輩、駅まで行きますか?」
「あぁ……」
「あたしも駅まで行くんです。
よろしければ、駅までご一緒しても良いですか?」
「……良いけど」
見るからに緊張し始めた、陽菜乃ちゃん。
別に彼女のことは、嫌いじゃない。
むしろ、さっきの話は面白かった。
…だからといって、好きでもない。
「じゃあ、行きましょう!」
「あ、あぁ……」
俺らはホールを出て、駅までの道を歩き始めた。
他の生徒は、すでに帰ったようだ。
ホールの前は大きな広場になっているが、そこにいるのは近所の子どもたちだけだった。
「「……」」
俺らは無言で駅まで歩いていた。
ハルや環奈ちゃんに会うまで、あんなにも話していたのに。
そもそも俺は、さっきまで聞き手だった。
たまに相槌(あいづち)や、感想を述べるだけ。
話すのは専(もっぱ)ら、陽菜乃ちゃんだった。