君と手を繋ぎたくて






泣きそう、とか哀しそう、ではない。

ショックな出来事があったような顔だ。






「先輩~」

「どうしたの」

「人身事故で、電車停まっているみたいなんです。
もう少しで動くと思うんですけど…」

「そうなんだ…それは災難だね」





人身事故、か。

もしかしたら…と思い浮かべてしまう。







あの時から、消えない。

あの子の、雛乃の、泣いた顔が。

絶望のみを映した、瞳が、声が。

―――忘れられない。






もし、雛乃と同じ結末を辿る人が、世の中にいたら。

…てか、いるっていうのが世の中だ。





俺と同じように、後悔し続けるのだろうか?

それとも、その人の分まで生きようと決意するのだろうか?

…一体、どちらが多い?





後者が多ければ良い。

だけど、前者の方が多い気がしてならない。







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