君と手を繋ぎたくて
「あたしですか?
…お祖母ちゃんですかね?」
「お祖母さん?」
「はい!
あたし、両親が仕事で忙しい人だったので、小学生の頃は近くに住んでいたお祖母ちゃんの家に行っていたんですよ。
いつも一緒に遊んでくれて、凄く楽しかったんです。
両親いなくて寂しい気持ちも、忘れられたんです。
だけど、あたしが小学校を卒業するときにお祖母ちゃんは死んじゃって。
元々病気抱えていたみたいで。
どんなに強い人でも病気には医療が発達しない限り勝てないから、今では受け止められているんですけど、当時は毎日お祖母ちゃんとの思い出を思い出しては泣いてましたね。
徐々にお祖母ちゃんとの思い出は、しっかり思い出として記憶出来るようにはなったんですけど、今でもふっとした瞬間に思い出して、寂しくなることはありますね」
思い出を、思い出として記憶できる。
普通のことだろうけど、俺は凄いと感心した。
―――俺もいつしか、雛乃との思い出を、良き思い出として記憶できるのだろうか?
「お祖母ちゃんね、死んじゃう時、病室にあたしだけを残して、お父さんとかは出て行かせたんです。
2人っきりになって、お祖母ちゃんはあたしに言ってくれたんです。
『これから陽菜乃ちゃんには辛いこと哀しいこと、沢山やってくるはずだわ。
だけど生きてさえいれば、楽しいこと嬉しいことも、必ずやってくるわ。
だから陽菜乃ちゃん、生きることを自らの手でやめることはしないで。
陽菜乃ちゃんには、大事な仲間が沢山出来るはずだから。
その大事な仲間のために、陽菜乃ちゃんは生きるの。
陽菜乃ちゃんだけの人生じゃないわ』って。
あたし、一言一句、全部覚えているんですよ!」
生きてさえいれば、楽しいこと嬉しいこと、必ずやってくる。
…陽菜乃ちゃんのお祖母さんの言葉が、俺へ深く沈んだ。